【パナソニック株式会社:岸原 直人】既に起きている未来に気づく方法
未来に、気づく。
無理難題とも思えるこの手法を具現化しているのが、パナソニック株式会社デジタルマーケティング推進室の岸原直人氏。
「限られたリソースを最適化して攻める。そして、戦略オプションを明確化する。」
岸原氏は有価証券報告書等のデータと、マーケットインテリジェンスツールSimilarWebを掛け合わせる事で市場を解読。
そして、解読結果を用いた戦略オプション構築を行う事により、”未来予測”を図ります。
2018年に行われたマーケット・インテリジェンス・サミットにおける基調講演を元に、未来に気づくための市場解析手法を特別公開します。
目次
デジタルマーケティング推進室の使命
目指すはヨコパナ
経営の神様と謳われた男、松下幸之助。
彼が1918年に創業した松下電気器具製作所は、パナソニック株式会社として、今なお世界の最前線を走り続けています。
企業体制は大きく分けて4つ。
- AP:アプライアンス社
- ES:エコソリューションズ社
- AIS:オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社
- CNS:コネクティッドソリューション社
2017年度売上高は、79,822億円。
そして、世界を含めた総従業員は約26万人。
この巨大企業において岸原氏が勤めているのが、2017年4月に新設された横断的組織の”デジタルマーケティング推進室”です。
*組織図は2018年11月時点のものです。

デジタル化により変化する社会・お客様を、データを通じて正しく理解し、One to Oneで最適を創出。
この題目を元に、パナソニック株式会社を横断的にサポートしています。
最先端データ・ドリブン・マーケティング
マーケティングのエキスパート:岸原直人氏
この横断的組織立ち上げを牽引したのが、マーケットインテリジェンスサミットで登壇された岸原直人氏です。
早稲田大学卒業後、1994年にパナソニック株式会社に入社。
国内のみならず、海外にも渡ってマーケティングに従事し、広報から経営企画と幅広く活躍されました。そして、2015年にMBAを取得したマーケティングのエキスパートです。
データを掛け合わせ、市場を解読する
「業界、競合、顧客分析において、有価証券報告書等のデータはもちろん有用であるが、これはスナップショット的な”静的なデータ”。SimilarWebは流動的にデータを取得できる事が強みです。」
イベント当日は国内住宅産業の可視化を事例に、ロングテール市場でどのように戦略オプションを構築するかを、実際のデータと共に解説されました。

どの市場が伸びているのか?市場構造はどのようになっているのか?そして、未来はどうなるのか。
SimilarWebと掛け合わせた最先端データ・ドリブン・マーケティングの一部を、図解と共にご紹介します。
住宅産業は、上位寡占度が低いロングテール市場
有価証券報告書等のデータから市場を整理する
伸びない市場、伸びる市場。
「マクロが伸びれば、我々にもチャンスがある。弊社としは、伸びている市場に触れていきたい。ただ、通常の仕事をしていると、触れられない。」
成長している市場に投資をする。
至極当たり前の事だが、そもそも、伸びている市場を把握している人がどれだけいるだろうか?
こちらのデータをご覧ください。

日本国内の住宅産業において、新築分譲および賃貸の市場は縮小していきます。
一方、中古流通 / リフォーム / 不動産、これらの市場は2020年にかけていずれも拡大していくと予想されています。
このデータだけでも、どこに投資すれば会社を勝たせる事ができるのか、火を見るよりも明らか。
独特なロングテール市場
さらに、市場構造を2つのデータから見ていきましょう。

上記は新築の販売戸数、またリフォームおよびリノベーションの販売規模を示したものです。
両者に言える事は、その他の市場が大きい事。
住宅産業は数社の大手企業が産業を支配している寡占状態ではなく、街の工務店等の中小企業群が市場を大きく占める独特な市場構造です。
複雑なビジネス概況
パナソニック株式会社は、この住宅産業において多岐に渡ってビジネスを展開しています。
家そのものを建てるためのビジネスだけでなく、家を建てる事を生業にしている企業に部品を販売するビジネスも担っており、その種類は多岐に渡ります。
ただ、多岐に渡るからこその難しさがあります。
「我々が直接お客様に販売する事もあるし、法人に部材等を販売する事もある。つまり、お客様が競合だったり、競合がお客様になったりする。非常に読みにくい文脈でビジネスを行なっています。」
ここまでのデータ、およびビジネスモデル上の課題を整理すると下記になります。
- 国内住宅産業は上位寡占度が低いロングテール市場
- 大規模かつ従来型ビジネスモデルが中心
- パナソニックにはB2BとB2Cのビジネスが並存
この情報の整理を行なった上で、岸原氏は次の思考に焦点を当てます。
「様々な要因から、市場は複雑化しています。その上で、限られたリソースを使って、どのように最適化を図って攻められるか。市場における戦略オプションの明確化が必要となってきます。こういう事をデジタルマーケティングツールと知識を使って最適解を導きだします。」
SimilarWebを用いた、未来に気づく3ステップ
鳥の目、虫の目、魚の目。
複雑な市場において、勝つための戦略を構築するためにはマクロかつミクロ観点で物事を捉える事が重要となります。

未来に気づく。
これを実現させるべく、どのようにSimilarWebを活用しているのか。イベント当日は大きく3つのステップを元に、具体的な活用方法を紹介されました。

- 競合・顧客の全体把握
- ロングテール市場の可視化
- 海外先行事例把握
この3ステップを、1つずつ、図解と共に解説を進めていきます。
未来に気づく方法
1.競合・顧客の全体把握
まずは、業界の理解から始めます。
SimilarWebの”ウェブのカテゴリー分析”機能を活用し、調査対象業界において検索されているキーワードを100個抽出します。
キーワードからは様々な気づきを取得できます。
今回、住宅産業を調査する際に岸原氏が注目したのは、“業界関連のキュレーター / プラットフォーマー”が多数見つかった事。

この3ステップを行うだけで、下記のような気づきを素早く取得できます。
- 調査対象業界において、ユーザーがどのような情報を求めているのか
- どのような企業 / サービスが伸びてきているのか
- 包括的に見た時の業界トレンドを認知
作業はシンプルながらも、短時間で競合・顧客の把握ができます。
2.ロングテール市場の見える化
コト検索 – 「企業名」ではなく「リノベーション/リフォーム/改築 etc」
「ロングテール市場では対象企業が多いため、どの企業と組むべきか、判断が難しい。」
先述した通り、住宅産業業界において販売規模の7~8割を占めるのは街の工務店を含めた決して規模が大きいとは言えない企業が多いロングテール市場。
そこで、意思決定を最速かつ最適に行うため、SimilarWebを使った独自の分析を行う。

これを行う事で市場を可視化できます。
「既存の家を改築する場合、”リフォーム”等のキーワードではなく、指名検索が多い。一方、中古のリノベーション物件を買う場合は、企業名がわからない。そのためユーザーは”コト検索”を行う。既存住宅の場合とでは、検索の仕方が異なる。」
ロングテール市場での勝ちパターン
ここからが、非常に興味深い。
業界内プレイヤーの中でも、パナソニック株式会社等の大手はやはり売上規模が大きい。
ところが、顧客の支持にフォーカスを当てると、その見方は少し異なってくる。

総トラフィック数、売上規模では大手が大きい。
しかし、顧客が実際に求めている情報に対して受け答えているのは、実は大手ではなく、規模では小さい中小企業。
これにより、岸原氏はこの市場において勝ち抜くパターンを導き出します。

「SimilarWebを使い、地域ごとにドリルダウンする。すると、解析の結果、地域密着型の企業と組むのが良いという判断に落ちる。これを社内の営業と情報連携を行い、実際に地域ごとのパートナー候補に会いにいく。そこで事前に業界情報を得ているため、信頼度の高い提案ができる。地域密着型と組めば複雑な市場構造でもカニバリゼーションを起こさずに済む。」
3.海外先行事例把握
「2018年になった今、以前アメリカで流行っていたものが流行り始めている。住宅産業でも同様の事が起きるのではないかと探っている。」
日本は、アメリカより2~3年、いや、それ以上に遅れている事が多々ある。
岸原氏がアメリカに駐在していた頃に流行っていたものは、今になって日本市場に浸透しています。

重要な事は、この現状を理解し、既に起きている未来に気づく事だと岸原氏は言う。
「やはり、アメリカは先を行っている。新しいビジネスモデル、集客方法が異なる海外をSimilarWebを使って分析する事で情報を得れる。分析でわかった事と同じ事を日本で横展開する。これを行えば、国内では先だったビジネスができる。ないしは、知っているからこそ”やらない”という選択肢を持つ事ができる。」
SimilarWebを使った分析手法は、いたってシンプル。

マーケット・インテリジェンス・サミット当日はアメリカの住宅産業を解析し、不動産相場の可視化サービスを紹介した。
現在、不動産相場関連のサービスに関して日本は法律上グレーですが、法改定が仮に進んだならば、巨大市場が日本に生まれる可能性があります。
未来に気づき、先行投資できるか否か。海外市場調査の重要性が謳われた解析事例でした。
まとめ
無理難題と考えられていた未来予測は、マーケットインテリジェンスを応用する事で”予測できる”という事が証明された本稿の事例。
アメリカが日本よりも進んでいる事を逆手にとり、海外事例を解析する事で未来予測を行う。非常に合理的かつ洗練された解析手法でした。
2019年のラグビーW杯。そして、2020年の東京オリンピック。多くの人が日本に押し寄せ、そこには必ず巨大な経済圏を生み出す事でしょう。
では、2020年後はどうなるのか?
未来予測を行い、“2020年後の未来”で勝てる戦略オプションを今から構築する事が、将来、企業存続を左右する一手となるはずです。
Yo Harasawa
エンタープライズ企業へのWeb/SNSディレクション、SimilarWeb専属コンサルタント、インサイドマーケティングプランナーを経た後に、現在はSimilarWeb カスタマーサクセスに従事。